患い
患い

逆光が視界を奪う綺麗な夕日を見ることすらままならない 夕暮れ
近頃めっきり見ることも少なくなってしまった いや 見れなくなった
目を開くことができた時に気づく今日はやたら外が暗い いやこんなもんか
街の灯りとは裏腹に月や星はより一層いつにも増して輝く

棚の上に置かれる新聞の見出しはどれもこれも暗いもので不安を煽るものばかり
老人はその新聞に手を伸ばし熱心に読みふける まるで子供のように
コロコロと表情が変わる 一喜一憂する姿がそこにはあった
「いいニュースなんてないだろうに」 記事を読んでない奴が言うことではないが きっとそうさ

痛みを罵倒するだけで引くと言うならとうにそうしている
 痛い―鎮痛剤はどこだ?
時間の経過は傷を癒すこともあるが同時に身体を蝕むこともまれにある
それが前者なのか後者なのか、医者と神のみぞ知るわけだ 素人に診察出来やしない
ただ恋の病だと言うなら話は別だ 誰でもいいから話を聞いてくれ カルテを!




手元に置いておいてほしいと思ったものは一度として傍にあったためしがない
朝も昼も夜も痛みに耐えることができずにまた眠れぬ夜を過ごすのは御免だ
寝るときに横にあったらあったで気になって眠れなくなるだろう知ってるよそのくらい
それでもいいから 無いと気が済まないんだ 痛み止めも特効薬も有りもしないんだから

想いを口や手から言葉にして相手に伝えることの難しさに気がついたのは割と最近のことで
逆にそれが簡単だってことに気がつくのはきっともっと先の話で結局どっちなのかもわからない
一回のポエトリーリーディングで相手にその真意がはっきり伝わるかどうかもわからないけれども
しまいにはこれが誰に向けて放たれた言葉なのか見失ったりしてしまうことも少なくはない だから

知的な言い回しだってできる気がしない今夜は月が綺麗ですねと他人の受け売りですら言えずに
気が付いたら朝になってしまうくらい間の悪い男に 想いを伝えることが出来る日が来るのだろうか
一緒に居ることができるなら死んでもいいという矛盾した考えを持ってからは夜の間だけ
直視することのできない夕日に向かって叫ぶだけの無意味とも思われる毎日を繰り返す

棚の上に置かれた新聞の見出しが こころなしか悪いことばかりではないような気がして
老人はその新聞に手を伸ばし熱心に読みふける まるで子供のように
コロコロと表情が変わる 一喜一憂する姿がそこにはあった
「いいニュースでもあったのか」と 記事を読んでみようかという気持ちになった 夕暮れ



記事を読むごとに より惹きこまれて 随分と夕日を見ることにもこなれて

夕日をおだてて 月が綺麗ですねと 言える日が来ることを心待ちにしていて

いつもこんなことなど 僕の中じゃ異例で できることだとしたら同じ人を指名で

いいとこを探せど こころなしか否定的 それでもどうか

Rap・Lyric・MIX by キター
Track by Ando